交通事故でけがを負った際、医療費を含む損害賠償を正しく受け取るには、どの制度がどう機能するのかを理解しておくことが大切です。以下に、制度の概要と対応の流れを整理しました。
1. 医療費の支払者と支払方法
交通事故による治療費は、原則として加害者側が負担します。ただし、実際の支払いは、加害者または被害者本人が加入する任意保険の保険会社が病院へ直接支払う「一括対応」が一般的です。この方法では、被害者が窓口で支払う必要がなく、精神的・金銭的負担が軽減されます。
一括対応が利用できない場合(加害者が任意保険未加入、対応を拒否されるなど)には、一時的に被害者が立て替えて支払い, 領収書・診断書などを保管し、後日加害者に請求する流れになります。
2. 自賠責保険による補償制度
すべての車が加入義務のある自賠責保険は、被害者救済を目的として、入通院にかかる治療費、交通費、休業損害、慰謝料などを補償する制度です。1人あたり傷害部分で最大120万円までとされており、それ以上の損害については別の手配が必要です。
治療費のほかに、通院交通費や看護費、診断書作成費用といった積極損害と呼ばれる実費支出も含めて請求対象になります。
3. 任意保険・人身傷害保険などによる上乗せ補償
自賠責の120万円を超える補償に対して、以下のような制度が機能します:
- 対人賠償保険(任意保険):自賠責の上限を超えた治療費や慰謝料などを補填
- 人身傷害保険:被害者自身が契約しており、事故の過失割合にかかわらず補償される
- 搭乗者傷害保険・無保険車傷害特約:特定の状況に応じた補償に対応
とくに人身傷害保険は、過失相殺の影響を受けずに補償できるため安心して治療に臨める制度といえます。
4. 健康保険の活用と注意点
交通事故でも健康保険の使用は原則可能です。ただし、使うには「第三者行為による傷病届」の提出が必要で、保険組合に事故原因を届け出なければなりません。
健康保険使用のメリット:
- 窓口負担は自己負担割合(通常3割)で済む
- 高額療養費制度によって、一ヶ月の医療費が限度額を超えた場合の払い戻しがある
- 自由診療ではなく保険診療を選ぶことで、診療単価が抑えられ、自賠責保険の上限内で長引く治療が可能になりやすい。
ただし、労災適用となる業務中や通勤中の事故、飲酒・無免許など法令違反の関与がある場合は健康保険は使えません。
5. 健康保険使用による「代位取得」の仕組み
健康保険組合は、事故で立替えた治療費に対して被害者の賠償請求権を代位取得し、加害者側に請求します。これにより、被害者が立替負担した3割分だけを加害者に請求すれば済み、負担を大きく軽減できます。
ただし、示談成立前に保険組合への連絡を怠ると、代位権が制限され、保険組合が賠償権を主張できなくなるケースもあるため、注意が必要です。
6. 過失割合と交渉の重要性
被害者側にも過失がある場合、賠償額はその割合に応じて減額される「過失相殺」が適用されます。過失割合の影響を最小限にするには、事故直後の現場写真、証言、ドライブレコーダー映像、交通事故証明書など、客観的証拠の確保が重要です。
交渉が難航する場合は、弁護士や交通事故紛争処理機関への相談も検討すべきです。
7. 症状固定と示談のタイミング
治療が一定レベルで完了し、医師によって症状固定と判断されると、保険会社による治療費支払いは終了します。その後、後遺障害等級の認定・逸失利益・後遺慰謝料などを含めた示談交渉に移ります。
示談決定前に健康保険組合へ治療終了日を届け出ずに手続きを進めてしまうと、組合の代位権が無効となる可能性があるため要注意です。
8. 補償項目と手続きの流れ
交通事故にかかる主な補償項目と、対応の流れを以下にまとめます
補償対象の内訳(積極損害など)
- 医療費(診察・入院・薬剤等)
- 通院交通費、付添看護費、雑費(書類取得費用など)
- 休業損害(収入補償)
- 慰謝料(入通院慰謝料、後遺障害慰謝料など)
- 逸失利益(後遺障害による将来失われる収入など)
対応の流れ
- 事故直後に病院を受診し、診断書や通院記録を残す
- 保険会社へ事故報告し、一括対応の可否を確認
- 一括対応が未対応なら、自身で**健康保険使用(第三者行為届の提出)も検討
- 領収書・診断書・収入証明などの書類を整理、保存
- 慰謝料・休業損害・逸失利益等を含めた損害額の請求・交渉(必要なら専門家の助言)
- 治療終了(症状固定後)に示談交渉・後遺障害認定手続きへ進む
まとめ
- 医療費を含む交通事故の損害賠償は、加害者側の補償が基本。任意保険加入があることで、一括対応による直接支払いが可能です。
- 自賠責保険は120万円までの補償に限られ、その上乗せ部分は任意保険や人身傷害保険などが補填します。
- 健康保険を適切に利用することで費用負担を減らし、自賠責適用範囲内で治療を長く続けやすくなるメリットがあります。
- 「第三者行為届」や保険組合との連携、過失割合の対応、示談のタイミングなど、手続き上の注意点も複数あります。
- 書類の準備や現況記録をしっかり行い、必要に応じて専門家の助力を得ながら対応を進めましょう。
事故後は焦りや不安も多いですが、制度を正しく理解し、必要な手続きを押さえておくことで、補償をスムーズに受け取ることができます。安心して治療に専念できる一助となることを願っています。
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