筋力アップと炭水化物
皆さんは筋トレに励んでいる中で、「頑張っているのにいまいち成果を感じない」と思われたことはありませんか?その中でも「プロテイン(タンパク質)を摂っているのに筋肉がつかない」
「トレーニング中に力が上手く入らない」
「日中に何故かぼんやりする」
このような方達は筋力アップに重要な「5大栄養素」の1つ「炭水化物(糖質)」が不足している可能性があります。炭水化物そのものに筋肉を形成する役割はありませんが、それを助ける大きな働きがあり炭水化物が不足してしまうと、せっかくの筋トレの成果が上手く発揮できなくなってしまいます。
そこで今回は筋トレの効果を最大限に引き出すために必要な栄養素の1つ「炭水化物」の概要と最適な摂り方について解説していきます。この記事を読んで正しい栄養管理を学び、理想のボディメイクを実現させていきましょう。
【炭水化物とは?】
炭水化物とは?

さまざまな運動(瞬発的・持久的)においてエネルギー源となる栄養素です。
消化吸収される「糖質」と消化吸収されない「食物繊維」に分かれます。
糖質が足りない状態が続くと体は脂質やタンパク質を分解してエネルギーを作ろうとします。その状態が長く続くと筋肉の材料になるはずのタンパク質がエネルギーとして使われ、筋肉が付きにくくなることがあります。逆に摂りすぎてしまうと体脂肪として蓄積されるリスクが大きくなります。
炭水化物を構成している糖質は単糖類・少糖類(オリゴ糖)・多糖類に分けられます。少糖類のうち、単糖が2個つながったものが二糖類(砂糖・乳糖・麦芽糖など)です。
(単糖類:これ以上分解できない最も小さい糖の単位で体の中で素早くエネルギーに変わる栄養素)
| 単糖類 | ブドウ糖(グルコース) | 果糖(フルクトース) | ガラクトース |
| 二糖類 | ショ糖(ブドウ糖+果糖) | 乳糖(ブドウ糖+ガラクトース) | 麦芽糖(ブドウ糖+ブドウ糖) |
これらは、すべて体の中でエネルギーになる「糖質」です。ショ糖は、調味料として普段使っている砂糖のことで、ブドウ糖と果糖が結合したものです。また、乳糖はブドウ糖とガラクトースが結合したもので牛乳に多く含まれています。またオリゴ糖は腸内の善玉菌を増やす効果があるとして特定保健用食品にも利用されています。
| 多糖類 | でんぷん | グリコーゲン |
| 食物繊維 | ペクチン | グルコマンナン | アガロース |
多糖類には代表的なエネルギー源となるでんぷんやグリコーゲンがあります。どちらもブドウ糖が多数結合したものです。また、果物に多く含まれるペクチン、こんにゃくに含まれるグルコマンナン、寒天に含まれるアガロースなどの食物繊維も多糖類に分類されます。
「食物繊維」は消化されずに大腸まで届くため、腸内環境の改善・便秘の予防や解消・生活習慣病(肥満・糖尿病など)の予防など、さまざまな健康効果をもたらす働きがあります。
【炭水化物の働き】
炭水化物の働き
炭水化物のうち、ショ糖やでんぷんなどの糖質は体の中で1gあたり約4kcalのエネルギーを産生します。炭水化物は体内では主に血液中にブドウ糖の形で存在しており、血液中のブドウ糖の濃度が血糖値となります。食事をして血糖値が高くなるとインスリンによって血糖値は低くなり、反対に空腹になり血糖値が低くなってくるとグルカゴンといったいくつかのホルモンによって血糖値は高くなります。
炭水化物(糖質)が不足した場合はエネルギー源として肝臓や筋肉の中に蓄えられているグリコーゲンを分解しますが、その量はそれほど多くないため、グリコーゲンも尽きてしまうとエネルギーが不足し疲れやすくなります。
特に脳は通常時、ブドウ糖を主なエネルギー源として使っています。糖質が長時間不足すると体は脂肪から作られるケトン体もエネルギーとして利用できるようになりますが、日常的な活動では脳の働きを保つためにブドウ糖を安定して届けることが大切です。
【一日に必要な摂取量】
1日に必要な摂取量
炭水化物のエネルギー量は1gあたり約4kcalで、一般的な成人における1日の推奨摂取量は総エネルギー摂取量(kcal)の50〜65%とされています。
1日に必要な摂取カロリーは性別・年齢・活動強度レベルによって異なり、厚生労働省が公開している「 日本人の食事摂取基準」ページで性別や年齢階級ごとの詳細な数値や報告書を確認できます。
以下で参照例として男女18~29歳、30~49歳までの1日の推奨摂取量を記載しています。
(計算例)
一般・男性(18~29歳・活動量普通)1日の総エネルギー(2600kcal)
2600kcal×0.5(50%)=1300kcal
1300kcal÷4kcal(1g)=325g
| 活動強度レベル | 活動強度レベル目安 |
|---|---|
| レベルⅠ(日中での活動量が低い) | 生活の大部分が座位で静的な活動が中心 |
| レベルⅡ(日中での活動量が普通) | 座位中心の仕事だが職場内での移動・立位作業・通勤・買物・家事・軽いスポーツ等を含む |
| レベルⅢ(日中での活動量が高い) | 移動や立位の多い仕事、または余暇における活発な運動習慣がある |
| 一般・男性(18~29歳) | 総エネルギー | 推奨摂取量 |
|---|---|---|
| レベルⅠ(低い) | 2250kcal | 約281〜365g |
| レベルⅡ(普通) | 2600kcal | 約325〜423g |
| レベルⅢ(高い) | 3000kcal | 約375〜487g |
| 一般・女性(18~29歳) | 総エネルギー | 推奨摂取量 |
|---|---|---|
| レベルⅠ(低い) | 1700kcal | 約212〜276g |
| レベルⅡ(普通) | 1950kcal | 約243〜316g |
| レベルⅢ(高い) | 2250kcal | 約281〜365g |
| 一般・男性(30~49歳) | 総エネルギー | 推奨摂取量 |
|---|---|---|
| レベルⅠ(低い) | 2350kcal | 約293〜381g |
| レベルⅡ(普通) | 2750kcal | 約343〜446g |
| レベルⅢ(高い) | 3150kcal | 約393〜511g |
| 一般・女性(30~49歳) | 総エネルギー | 推奨摂取量 |
|---|---|---|
| レベルⅠ(低い) | 1750kcal | 約218〜284g |
| レベルⅡ(普通) | 2050kcal | 約256〜333g |
| レベルⅢ(高い) | 2350kcal | 約293〜381g |
*小数点以下の数値は四捨五入で表記しています
<参照> 厚生労働省・日本人の食事摂取基準(2025年版)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
【炭水化物を多く含む食品】
炭水化物を多く含む食品


| 穀類 | 分量 | 含有量 |
|---|---|---|
| コーンフレーク(とうもろこし) | 1食分:40g | 33.4g |
| 角形食パン | 1枚(6枚切り):60g | 27.8g |
| おにぎり | 1個:100g | 39.4g |
| 水稲めし、精白米、うるち米 | 茶碗1杯:150g | 55.7g |
| マカロニ、スパゲッティ・ゆで | 1人前:100g | 32.2g |
| いも・でんぷん類 | 分量 | 含有量 |
|---|---|---|
| はるさめ、緑豆はるさめ・乾 | 1食分:15g | 13.1g |
| さつまいも・皮つき生 | 中1本:200~250g | 66.2~82.8g |
| じゃがいも・皮つき生 | 中1個:150~200g | 23.9~31.8g |
| ながいも・生 | 1本:600~700g | 83.4~97.3g |
| さといも・生 | 中1個:50~60g | 6.6g~7.9g |
| 野菜類・果実類 | 分量 | 含有量 |
|---|---|---|
| とうもろこし・生 | 中サイズ1本:150~175g | 25.2g~29.4g |
| 西洋かぼちゃ・生 | 8分の1個:120g | 24.7g |
| なす・辛子漬け | 1本:80g | 24.6g |
| バナナ・生 | 1本(可食部):100g | 22.5g |
| リンゴ・皮つき生 | 1個(可食部):250g | 40.5g |
・調理法により食品の成分値、食品重量が変化します。食品重量については、例えばゆでる場合、食品の水分が流れ出て重量が減る食品とゆで湯を吸収して重量が増える食品がありますので、ゆで100gの場合、生100gをゆでた場合の重量ではなくゆでた状態での100gです。
・加熱調理(ゆで、蒸し)をした食品は、ゆで汁(食塩水)は廃棄し、他調味料は含まれていません。成分量は加熱調理後の可食部の成分量となります。
💡.食品成分データベースの活用
食品成分データベースとは、文部科学省が提供する公的なウェブサイトであり、「日本食品標準成分表」をもとに様々な食品の栄養成分やエネルギーをインターネットで自由に検索できるシステムです。毎日の献立作成や栄養計算に役立ててみましょう。
https://fooddb.mext.go.jp/
<参照> 文部科学省・日本食品標準成分表(八訂)増補2023年版
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html
【炭水化物の上手な取り方】
炭水化物の上手な取り方
【1日3食の食事】
筋力アップを目指すうえで大事なポイントは炭水化物の適切な摂取量と摂取するタイミングです。
まずは1日3食の食事をしっかりと摂り、栄養の不足を防ぎましょう。特に1日の初めである朝はエネルギーが必要なので抜いたりせずにきちんと摂ることをおすすめします。逆に夜(特に寝る前など)はエネルギーを消費しないため、余ったエネルギーが脂肪に変わりやすくなってしまうので摂取量を減らしていくと良いでしょう。
【筋トレ前後の食事】
もう一つのポイントはトレーニング前後の炭水化物の摂取です。このタイミングで適切な栄養摂取をおこなうことでトレーニングの成果を向上させることが出来るので、以下のトレーニング前後の食事の摂り方を参考にしてみて下さい。
【筋トレ前】
筋トレ中に炭水化物からの筋グリコーゲンが不足してしまうとパフォーマンスが低下し、非効率なトレーニングになってしまうため、トレーニング前に消化吸収の早い食品を摂りエネルギーを補給しておきましょう。
(オススメの食品:おにぎり・うどん・バナナ・エネルギーバー・エネルギーゼリー・和菓子など)
【筋トレ後】
トレーニング後は筋肉がタンパク質を取り込みやすい状態がしばらく続くため、エネルギー回復のための炭水化物(糖質)と筋肉を作るためのタンパク質を合わせて摂りましょう。トレーニングの終了後に糖質を摂取することで筋グリコーゲンの回復を促し筋タンパク質の分解を抑制します。すぐに食事がとれない場合は直後に補食としてバナナや和菓子などで補給し、タンパク質がエネルギーに変わることを抑制しましょう。その後、2時間以内にしっかりとした食事を摂ることが理想的です。
💡.ビタミンB1と一緒に摂ろう
ビタミンB1は水溶性ビタミンの1つで化学名を『チアミン』といい、体の活動の源となる糖質の代謝に欠かせない栄養素です。食事で摂った糖質は体内で酵素の働きによりエネルギーに変換されますが、ビタミンB1は酵素の働きをサポートする役割があります。
炭水化物を多くとるほどビタミンB1の消費量が増えるため、不足するとエネルギーが作れず疲労やだるさの原因になってしまうので、ビタミンB1を含む食品も一緒に摂りましょう。
(*ビタミンB1は余剰分は尿として排出されるため、1度に多く摂るのではなく各食事に振り分けて摂ることで効率よく摂取することが出来ます。)
🍌ビタミンB1を多く含む食品
| 豚肉(ヒレ・もも) | うなぎ | オートミール | えんどう豆 | むきごま |
| ボンレスハム | たらこ(生) | ライ麦パン | 大豆 | ピスタチオ |
【まとめ】
まとめ
筋トレにおいて炭水化物(糖質)は非常に重要な役割を果たします。エネルギー源として機能するだけでなく、トレーニング中に筋肉が分解されてエネルギーとして使われるのを防ぐ効果もあり筋肉を効率よくつけたい場合、炭水化物は欠かせない栄養素です。
ご自身の適切な必要量の把握と摂取のタイミング、この2つを意識してみるだけでも今までよりもスムーズなサイクルで体作りが行われていくでしょう。是非とも積極的に炭水化物(糖質)も取り入れていってみましょう。
今日からできる4つのステップ
1. 自分に最適な摂取量を把握する
2. 朝・昼・晩の食事を欠かさず摂る
3. 筋トレ前後の食事を意識する
4. ビタミンB1も一緒に摂る
<参考文献>
厚生労働省 e-ヘルスネット
公益財団法人長寿科学振興財団・健康長寿ネット
厚生労働省・日本人の食事摂取基準(2025年版)
文部科学省・日本食品標準成分表(八訂)増補2023年版
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