筋力アップと脂質
筋トレを始めたばかりの皆さんは筋肉をつけるためにタンパク質が大事だと聞いたことがあるはずです。しかし実は「脂質」も筋力アップには欠かせない重要な栄養素です。
「脂質=太る」というイメージを持つ方が多いかもしれません。ですが正しい選び方と摂るタイミングをマスターすれば理想のボディメイクを強力にサポートしてくれます。この記事では初心者の方に向けて脂質の基本から効果的な摂り方までを分かりやすく解説します。
最後まで読むことで今日からすぐ実践できる正しい知識がしっかりと身につきます!
この記事を読んで正しい栄養管理を学び理想のボディメイクを実現させていきましょう。
【脂質とは?】
脂質とは?

人間の体を構成する細胞膜やホルモンを作るための重要な栄養素です。長時間の運動を行う際にも効率よくエネルギーに変わるため筋トレには欠かせません。さらに脂溶性ビタミンの吸収をサポートする大切な役割も持っています。
脂質が不足してしまうと肌が乾燥したり便秘になったりするリスクがあります。
逆に摂りすぎると体脂肪として蓄積されやすいためバランスよく摂取することがとても重要です。
【脂質の働き】
脂質の働き
脂質は1gあたり9kcalという高いエネルギーを生み出し体を動かすための強力なエネルギー源となるため筋力トレーニングを支える重要な働きを持っています。
そして筋肉を成長させるホルモンの材料になるのが重要なポイントです。筋肉を大きくするテストステロンなどのホルモンは脂質から作られます。極端に脂質を制限するとホルモンが作られず筋肉がつきにくくなるという指摘があるため、しっかりと適量を摂る必要があります。
また細胞膜を作る成分でもありビタミンの吸収を助ける役割も担っています。ビタミンDは筋肉の合成を促す働きがあるとされているため筋トレの効果を高めるためにも脂質は重要な栄養素となります。
【一日に必要な摂取量】
1日に必要な摂取量
脂質の摂取量の目安は成人で総エネルギー摂取量(kcal)の20%以上〜30%未満とされています。
1日に必要な摂取カロリーは性別・年齢・活動強度レベルによって異なり、厚生労働省が公開している「 日本人の食事摂取基準」ページで性別や年齢階級ごとの詳細な数値や報告書を確認できます。
以下で参照例として男女18~29歳、30~49歳までの1日の推奨摂取量を記載しています。
(計算例)
一般・男性(18~29歳・活動量普通)1日の総エネルギー(2600kcal)
2600kcal×0.2(20%)=520kcal
520kcal÷9kcal(1g)=約57.7g
| 活動強度レベル | 活動強度レベル目安 |
|---|---|
| レベルⅠ(低い) | 生活の大部分が座位で静的な活動が中心 |
| レベルⅡ(普通) | 座位中心の仕事だが職場内での移動・立位作業・通勤・買物・家事・軽いスポーツ等を含む |
| レベルⅢ(高い) | 移動や立位の多い仕事、または余暇における活発な運動習慣がある |
| 一般・男性(18~29歳) | 総エネルギー | 推奨摂取量 |
|---|---|---|
| 日中の活動量が低い場合 | 2250kcal | 約50〜73g |
| 日中の活動量が普通の場合 | 2600kcal | 約58〜84g |
| 日中の活動量が高い場合 | 3000kcal | 約67〜97g |
| 一般・女性(18~29歳) | 総エネルギー | 推奨摂取量 |
|---|---|---|
| 日中の活動量が低い場合 | 1700kcal | 約38〜55g |
| 日中の活動量が普通の場合 | 1950kcal | 約43〜63g |
| 日中の活動量が高い場合 | 2250kcal | 約50〜73g |
| 一般・男性(30~49歳) | 総エネルギー | 推奨摂取量 |
|---|---|---|
| 日中の活動量が低い場合 | 2350kcal | 約52〜76g |
| 日中の活動量が普通の場合 | 2750kcal | 約61〜89g |
| 日中の活動量が高い場合 | 3150kcal | 約70〜102g |
| 一般・女性(30~49歳) | 総エネルギー | 推奨摂取量 |
|---|---|---|
| 日中の活動量が低い場合 | 1750kcal | 約39〜56g |
| 日中の活動量が普通の場合 | 2050kcal | 約45〜66g |
| 日中の活動量が高い場合 | 2350kcal | 約52〜76g |
*上限の数値は29%で算出しています
*小数点以下の数値は四捨五入で表記しています
*推奨摂取量の数値は調理に使う油だけでなく食品に含まれるすべての脂質を合わせた量です
<参照> 厚生労働省・日本人の食事摂取基準(2025年版)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
【良質な油と控えるべき油】
良質な油と控えるべき油
脂質は主に炭素・酸素・水素からなる脂肪酸で構成されており大きく4つに分類されます。
このうちの2つ一価不飽和脂肪酸(炭素の結合に二重結合を1つだけ持つ脂肪酸)と多価不飽和脂肪酸(炭素の結合に二重結合を2つ以上持つ脂質)は悪玉コレステロールの減少・中性脂肪の低下・心血管疾患の予防・アレルギーを抑えるなどの体に良い影響があるとされており「積極的に摂るべき良質な油」とされています。
反対に飽和脂肪酸(肉の脂身やバターなどの動物性脂肪に多く含まれる脂質の一種)とトランス脂肪酸(主に植物油の加工や精製などの際に生じる脂肪酸の一種)の2つは悪玉コレステロールの増加、生活習慣病や心筋梗塞など循環器疾患のリスクを高めるため「控えるべき油」とされており、脂質を含む食品にどの脂肪酸が含まれているのか把握することが重要になります。
※【脂質を多く含む食品】の項目で各種の脂肪酸について解説していますが全てを暗記する必要はありません。まずは「積極的に摂るべき良質な油」と「控えるべき油」があることと、それらが含まれる食品群を覚えるだけでも十分に食生活に役立たせることができます。
🥑【良質な油の食品群と主な食品】
| 青魚 | さば・さんま・いわし |
| 植物油 | なたね油・えごま油・オリーブオイル |
| 種子・果実類 | マカダミアナッツ・くるみ・アボカド |
🍟【控えるべき油の食品群と主な食品】
| 乳製品 | バター・生クリーム・コーヒーフレッシュ |
| 油脂類 | マーガリン・ファットスプレッド・ショートニング |
| 肉類・肉加工品 | 鳥皮・ベーコン・ウィンナーソーセージ |
| 菓子・調理食品 | チョコレート・ケーキ・フライドチキン |
【脂質を多く含む食品】
脂質を多く含む食品


一価不飽和脂肪酸(オメガ9系)
体内で合成できるため必須脂肪酸(体内で作ることができないため食事から必ず摂取する必要がある脂肪酸)ではありませんが、悪玉コレステロールを減らし血管の健康維持や便秘改善に役立つとされています。
植物油(大さじ1杯)
| 米油 | ごま油 | なたね油 | べに花油 | オリーブオイル |
| 14.0g | 12~14.0g | 12~14.0g | 12~14.0g | 12~14.0g |
| 魚介類 | 分量 | 含有量(脂質) |
|---|---|---|
| さんま・皮つき・生 | 1尾:100g | 25.6g |
| くろまぐろ・天然・脂身・生 | 刺身5切れ:80~100g | 22.0~27.5g |
| さば・加工品・ひらき干し | 1食分:70~100g | 20.0~28.5g |
| あんこう・肝・生 | 1食分:21~38 | 8.8~15.9g |
| 種子・果実類 | 分量 | 含有量(脂質) |
|---|---|---|
| マカダミアナッツ・煎り・味付け | 1粒:2~2.5g | 1.5~1.9g(100g:76.7g) |
| くるみ・煎り | 1粒:4g | 2.8g(100g:68.8g) |
| アーモンド・煎り・無塩 | 1粒:1g | 0.5g(100g:54.1g) |
| アボカド・生 | 1食分:100g | 17.5g |
多価不飽和脂肪酸(n-3系、n-6系)
青魚(EPA、DHA)や植物油(リノール酸)に含まれる。必須脂肪酸です。
| n-3系 | 血液をさらさらにし、中性脂肪の低下・心血管疾患の予防・アレルギーを抑える効果があるとされています。 |
| n-6系 | 植物油や加工食品に多く血中コレステロールの低下や認知機能改善のメリットがありますが摂りすぎると炎症や動脈硬化の引き金になる可能性があります。 |
植物油(大さじ1杯)
| 大豆油 | えごま油 | アマニ油 | コーン油 | ひまわり油 |
| 14.0g | 12~14.0g | 12~14.0g | 12~14.0g | 12~14.0g |
| 魚介類 | 分量 | 含有量(脂質) |
|---|---|---|
| さんま・皮つき・生 | 1食分:100g | 25.6g |
| ぶり・天然・成魚・生 | 1食分:80~100g | 14.1~17.6g |
| まさば・生 | 1食分:80~100g | 13.4~16.8g |
| まいわし・生 | 中サイズ1尾:32g〜50g | 2.9~4.6g(100g:9.2g) |
| 種子類 | 分量 | 含有量(脂質) |
|---|---|---|
| 松の実・生 | 大さじ1杯:10g | 6.8g(100g:68.2g) |
| くるみ・煎り | 1粒:4g | 2.8g(100g:68.8g) |
| えごま・乾 | 1食分:10~15g | 4.3~6.5g(100g:43.4g) |
| チアシード・生 | 1食分:10~15g | 3.4~5.1g(100g:33.9g) |
| その他 | 分量 | 含有量(脂質) |
|---|---|---|
| ごま・煎り | 大さじ1杯:9~10g | 6.9~10.3g(100g:54.2g) |
| 油揚げ・生 | 1粒:20~30g | 2.8g(100g:34.4g) |
| うなぎ・かば焼き | 1食分:100~150g | 21.0~31.5g |
| いくら・しろさけ | 小鉢1杯:60g | 9.4g(100g:15.6g) |
飽和脂肪酸
動物性脂肪やパーム油に多く含まれる脂肪酸で安定したエネルギー源となりますが、摂取しすぎると悪玉コレステロールを増加させ、生活習慣病や心筋梗塞など循環器疾患のリスクを高めるとされています。
油脂類(大さじ1杯)
| ラード | パーム油 | ココナッツオイル |
| 12.0g | 12.0g | 12.0g |
| 肉類 | 分量 | 含有量(脂質) |
|---|---|---|
| 鶏・にわとり、親、皮つき、生 | 1食分:100g | 17.2g |
| 豚・ウインナソーセージ | 1本:20g | 6.1g |
| 豚・ばらベーコン | 1枚:17g | 3.3g |
| 乳製品 | 分量 | 含有量(脂質) |
|---|---|---|
| 生クリーム・乳脂肪 | カップ半分:100g | 43.0g |
| 無発酵バター・食塩不使用 | トースト1枚分:10g | 8.3g |
| ナチュラルチーズ・チェダー | スライス1枚:15~18g | 5.1~6.1g |
トランス脂肪酸
主に植物油の加工や精製などの際に生じる加工油脂に含まれ、過剰摂取は悪玉コレステロールを増やし、心血管疾患のリスクを高めるとされています。
| 油脂類 | 分量 | 含有量(脂質) |
|---|---|---|
| マーガリン・家庭用、有塩 | トースト1枚分:10g | 8.3g |
| ファットスプレッド | トースト1枚分:10g | 6.9g |
| ショートニング | 大さじ1杯:12g | 12.0g |
| クリーム類 | 分量 | 含有量(脂質) |
|---|---|---|
| 純生クリーム・乳脂肪 | カップ半分:100g | 43.0g |
| ホイップクリーム・植物性脂肪 | 1食分:15~30g | 5.4~10.8g |
| コーヒーフレッシュ・植物性脂肪 | 1個:4.5ml | 1.1g |
| 調理・揚げ物 | 分量 | 含有量(脂質) |
|---|---|---|
| フライドチキン・もも | 1ピース:87g | 12.8g |
| ポテトコロッケ | 1食分:100g | 12.6 |
| フライドポテト・皮なし、冷凍品 | 1食分:100g | 10.6 |
| ❗.植物油脂を使用したスナック菓子やカップ麺(揚げ麺)、カレールウなどにもトランス脂肪酸が多く含まれます。また植物油脂に加えてバター、生クリーム、カカオバターなどの動物性油脂を使用した洋菓子(チョコレート、クッキー、タルト、ケーキ)には飽和脂肪酸とトランス脂肪酸の両方が多く含まれるので食べすぎには注意が必要です。 |
💡.食品成分データベースの活用
食品成分データベースとは、文部科学省が提供する公的なウェブサイトであり「日本食品標準成分表」をもとに様々な食品の栄養成分やエネルギーをインターネットで自由に検索できるシステムです。毎日の献立作成や栄養計算に役立ててみましょう。
https://fooddb.mext.go.jp/
<参照> 文部科学省・日本食品標準成分表(八訂)増補2023年版
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html
【脂質の上手な摂り方】
脂質の上手な摂り方


家庭で使うベストの油
オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸は体内で合成できない必須脂肪酸ですが現代の食生活ではオメガ6脂肪酸に偏りやすく、オメガ3脂肪酸が不足しやすいといわれています。
特に昼食に外食や調理済食品・加工食品を利用されている方は自分で選んでいないつもりでもオメガ6脂肪酸を多く摂取している可能性があります。
そこで家庭で使用する油を不足しがちなオメガ3脂肪酸とオメガ9脂肪酸を多く含む油に置き換えることでバランスのとれた脂肪酸の摂取が可能になります。
🍤【オメガ9脂肪酸を多く含む油】
酸化に比較的強い性質があり炒め物・焼き物・揚げ物などの加熱調理向きです。
| 米油 | なたね油 | キャノーラ油 | オリーブオイル |
🥗【オメガ3脂肪酸を多く含む油】
ドレッシングや料理の仕上げなどの生食向きです。熱・光・空気で酸化しやすいため開封後は冷暗所で保管し早めに使い切りましょう。
| えごま油 | アマニ油 |
調理法で脂質の量を調整
外食などで脂質を摂りすぎていると感じた場合は家庭での調理のときに少し工夫をすることで脂質の摂取量を調整することが出来ます。
肉や魚は皮などの余計な脂肪を取り除く、調理方法は揚げるよりもゆでる・蒸す・焼くことで脂質の量を抑えることができます。またフッ素樹脂加工のフライパンを使えば油の量はさらに抑えられます。
(❗.高温・長時間の加熱や使い回しは酸化を進めるため注意しましょう。)
脂質とビタミンを一緒に摂る
筋トレの成果を最大化するためには脂質とビタミンをセットで考えることがとても重要です。
良質な脂質を摂ってもビタミンB群が不足しているとうまくエネルギーに変換されない可能性があります。
さらに筋肉の成長を後押しするとされるビタミンDなどの「脂溶性ビタミン」は油分と一緒に摂ることで体への吸収率が上がります。
効率の良い体作りのために脂質とビタミンを一緒に摂ることを意識してみましょう。
🥦【脂溶性ビタミンを含む食品】
| ビタミンA | にんじん・かぼちゃ・ほうれん草・小松菜 |
| ビタミンD | さんま・さば・卵黄・乾燥きくらげ |
| ビタミンE | アーモンド・落花生・モロヘイヤ・アボカド |
| ビタミンK | 納豆・ブロッコリー・ほうれん草・小松菜 |
🍌【脂肪代謝を支えるビタミンを含む食品】
| ビタミンB2 | レバー・うなぎ・牛乳・ヨーグルト |
| ビタミンB6 | レバー・さんま・さば・バナナ |
| ナイアシン | かつお・まぐろ・たらこ・乾燥まいたけ |
【まとめ】
まとめ
脂質は筋力アップに欠かせない重要な栄養素です。 特に筋肉を成長させるホルモンであるテストステロンの材料となるため極端な脂質制限は逆効果です。
また細胞膜を構成したり筋肉合成を促すビタミンDなどの吸収を助けたりするなど体を内側から整えるためにも脂質は必須です。
一日の適切な摂取量をしっかりと把握して三食の食事で賢く脂質を取り入れることがとても重要になります。
日々の食事では良質な油を積極的に摂り入れつつ悪玉コレステロールを増やす油は控えるなどバランスの良い食事を心がけてみましょう。
今日からできる4つのステップ
1. 一日に必要な摂取量を把握する
2. 良質な油を摂る
3. 控えるべき油を減らす
4. ビタミンと一緒に摂る
<参考文献>
厚生労働省 e-ヘルスネット
公益財団法人長寿科学振興財団・健康長寿ネット
厚生労働省・日本人の食事摂取基準(2025年版)
文部科学省・日本食品標準成分表(八訂)増補2023年版
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